球面テンソル演算子についてのメモ

J.J.サクライ『現代の量子力学』の3.11節「テンソル演算子」(1版では3.10節)に入ったところで何をしているのか分からなくなり、特に球面テンソル周りの数式が何をやっているのか意味が取れずそこで止まっていた。
だいぶ試行錯誤して考えがまとまってきたので、現在理解した(と思う)ことを残しておく。

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電磁気学における磁場BとHの関係(その2)

電磁気学における磁場BとHの関係(その1)の続き。
その1で、磁化を考慮しないでも生じるBとHの違いを扱ったので、この文章では、磁化の扱いで生じるBとHの違いを扱う。

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電磁気学における磁場BとHの関係(その1)

磁場のBとHの違いを説明する場合、たいていは

  • 磁化の影響を取り込んで補正したことによる違い。または、
  • 磁化をどうモデル化したか(磁気双極子or微小ループ電流)による違い。

の問題として説明される。
でも、たとえ磁化を一切扱わなくても、概念的には区別し得る。
この「その1」では、磁化(磁石)のことを考えないでも生じる違いを見る。


(注: 普通Hを「磁場」と呼びBを「磁束密度」と呼んで、またEを「電場」、Dを「電束密度」と呼ぶけど、この文章では、「磁束密度」「電束密度」という言葉は使わず、HとBをどちらも「磁場」と呼び、EとDをどちらも「電場」と呼ぶことにする)

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「 田崎晴明『熱力学』の温度の定義について 」への訂正と補足

以前「 田崎晴明『熱力学』の温度の定義について」という文章を書いた。

書いたことのうち必要な部分を要約する(+多少補う)と、

  1. 田崎『熱力学』では、次のように議論が進んでいる。
    • 2.4節(p.31)で、使用する温度として、はじめから「摂氏温度に273.15度加えた値」またはそれを定数倍した値(つまり絶対温度)を取る、と説明。
    • 3.7節(p.52-p.52)で、p(T;V,N) = \frac{NRT}{V}に正確に従う気体が理想気体である、と説明(定義)する。
    • 5.2節(p.76-p.77)で、理想気体を使ったカルノーサイクルの高温部分と低温部分での吸熱量を具体的に計算して、その比が熱源の温度の比T'/T (熱力学的に正しい値)になることが示される。
  2. しかし、絶対温度とは違う温度目盛りを取ったと考えて、その目盛りTについてp(T;V,N) = \frac{NRT}{V}に正確に従う気体を「理想気体」(ニセ理想気体)として読み進んでも、議論や説明はそのまま成り立つ。
  3. そのように読み進んでも、5.2節の計算結果はT'/Tとなり、カルノーサイクルの吸熱量の比についての正しい値(絶対温度の比)と一致している。
  4. 取った温度目盛りと絶対温度が一致するためには、どこかに追加の仮定や前提がいるはず。
  5. その役目を負っているのは、理想気体のエネルギーを与えている4.4節(p.68)の式(4.33)  U(T;V,N) = cNRT + Nu だ。しかし、これが重要な前提だと読者には分からない。
  6. だから読者に分かりにくい理論展開になっている。

という趣旨。
しかし、このうち4と5の部分は不正確かつ、もっと説明が必要だった。

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リー群の入門的なこと

リー群というのは、おおざっぱには「微分ができる群」だと説明できるけれど、正則行列や指数行列を使って説明するものもあれば、多様体を使って説明するもあったりで、なかなか分かりにくい。

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群のコホモロジーについての補足

以前書いたメモ:ヒルベルトの定理90への補足(あるいは関連する話)。

  • ヒルベルトの定理90は、1897年の『報文』(Zahlbericht)に出てくる定理。群のコホモロジーのH1(Gal(L/K), L×) についての主張の特別な場合(巡回拡大の場合)とみなせる。
  • 河田敬義『ホモロジー代数』序の記述によると、群のコホモロジーのn=2の場合H2は、群の拡大や因子団の理論において、1920年代に用いられていた。
  • ヴェイユ『数学の創造』の[1939b]の項に次のように書かれている。私は漠然と、群の指標、次いで因子団は、もっと長く続くはずのある列の始めの部分だと考えていた。私は1937年頃ある友人に有限群の「ベッチ数」を定義しようと考えているのだと話したことを記憶している。つまり現代の言葉で言えば群のコホモロジー群を考えようとしていたわけである。当時では奇妙に思えたかも知れないが、誰もが知っているように、この予感は正しかったのである。
  • 群のコホモロジーの定義を最初にしたのは、アイレンバークとマクレーンみたい。Eilenberg, MacLane "Relations Between Homology and Homotopy Groups" (1943)。

ヒルベルトの定理90がH1の場合だったので、この文章ではH2が出てくる話題である群の拡大を扱う。

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