素数定理の証明について

素数定理の証明については、ザギエ(Zagier)による4ページの解説論文「Newman's Short Proof of the Prime Number Theorem」に示されている証明があるけど、説明が簡潔すぎることもあって証明を読み進んでいくのがかなり大変という印象がある。むしろ、アダマ…

ルジャンドル変換についてのメモ

まずルジャンドル変換というのは、おおざっぱには次のようなもの。xを変数とする関数f(x)とその導関数を考える。(この関数f(x)は適当な性質を満たす(= 凸関数である)としておく。) このとき、X = X(x)の関係を逆に解いて(x = x(X)という関数を導いて)、xの代…

場の量子論への入門の一歩前

目次:「1.場の量子論 = 粒子数の変化を扱える量子論」「2.生成・消滅演算子」「3.古典論への移行と量子化」「4.量子力学から場の量子論への移行」「5.量子力学から場の量子論への移行(古典場を経由しない仕方)」「6.終わり」 1. 場の量子論 = 粒子数の変化を…

Rust入門を兼ねてプロジェクト・オイラーの問題を解く

とりあえず問100まで解くことに決めて始めたのだけど、問題の難易度やプログラムを書く面倒さが速いペースで増加していくので割と早い段階で問題を解くことが優先になって、Rustの機能やライブラリを理解することがおざなりになってしまった。 それでも言語…

無職になる

2年前から給料未払いだったから実質無職だったのと変わらない気もするけど会社職場も消滅し正式に無職の状態になって3ヶ月ぐらいになった。貯金の残りからすると今年中にも破綻しそうだけど考えるのも面倒なのでとりあえず本を読んでいる。読んだ本のいくつ…

スピンと群の表現

目次: スピンの特殊さ 物理系の回転 スピンに関する実験 座標軸を回転させた場合 群の表現から見たスピン 群の表現 SO(3)の表現の例 スピンの場合 SO(3)の表現とSO(3)の表現 既約表現への分解の例 SO(3)の既約表現とSO(3)の既約表現 リー群とリー代数 リー群…

圏論における普遍性と普遍射

数学における普遍性の概念は、どういうものなのか一言で説明しにくいものだけど、圏論では普遍射を使って定義するのが普通。 と思ったら、『ベーシック圏論』は副題(訳書での追加?)が「普遍性からの速習コース」だけど、本文中に普遍射という言葉がそもそも…

球面テンソル演算子についてのメモ

J.J.サクライ『現代の量子力学』の3.11節「テンソル演算子」(1版では3.10節)に入ったところで何をしているのか分からなくなり、特に球面テンソル周りの数式が何をやっているのか意味が取れずそこで止まっていた。 だいぶ試行錯誤して考えがまとまってきたの…

電磁気学における磁場BとHの関係(その2)

電磁気学における磁場BとHの関係(その1)の続き。 その1で、磁化を考慮しないでも生じるBとHの違いを扱ったので、この文章では、磁化の扱いで生じるBとHの違いを扱う。 目次: 磁石(磁化)のモデル化の仕方とその影響 磁荷双極子モデルと微小ループ電流モデル …

電磁気学における磁場BとHの関係(その1)

磁場のBとHの違いを説明する場合、たいていは 磁化の影響を取り込んで補正したことによる違い。または、 磁化をどうモデル化したか(磁気双極子or微小ループ電流)による違い。 の問題として説明される。 でも、たとえ磁化を一切扱わなくても、概念的には区別…

「 田崎晴明『熱力学』の温度の定義について 」への訂正と補足

以前「 田崎晴明『熱力学』の温度の定義について」という文章を書いた。書いたことのうち必要な部分を要約する(+多少補う)と、 田崎『熱力学』では、次のように議論が進んでいる。 2.4節(p.31)で、使用する温度として、はじめから「摂氏温度に273.15度加えた…

リー群の入門的なこと

リー群というのは、おおざっぱには「微分ができる群」だと説明できるけれど、正則行列や指数行列を使って説明するものもあれば、多様体を使って説明するもあったりで、なかなか分かりにくい。 目次: リー群とは リー群の扱い方 微分でリー群の特徴を取り出す…

群のコホモロジーについての補足

以前書いたメモ:ヒルベルトの定理90への補足(あるいは関連する話)。 ヒルベルトの定理90は、1897年の『報文』(Zahlbericht)に出てくる定理。群のコホモロジーのH1(Gal(L/K), L×) についての主張の特別な場合(巡回拡大の場合)とみなせる。 河田敬義『ホモロジ…

チコノフの定理の証明の概略

「コンパクトと点列コンパクト 」で触れたチコノフの定理の証明について。

小田勝『読解のための古典文法教室』

タイトルの惹句に「大学生・古典愛好家へ贈る」とあるように、同著者の『実例詳解古典文法総覧』をベースに分量を絞って学習参考書的な内容にしたという趣きの本。『実例詳解古典文法総覧』が700ページを超えるのに対して、本書は250ページほど。 『実例詳解…

コンパクトと点列コンパクト

前に書いた「収束から始める位相入門」では、収束性をもとにして、位相概念「開集合」「閉集合」「開核」「閉包」「近傍」を説明した。 この流れでいくと「コンパクト」についても、点列コンパクトつまり Xは点列コンパクト ≡ Xの点列は、収束する部分列を必…

楕円積分、楕円関数、楕円曲線の関係についてのメモ

名前の由来 楕円積分、楕円関数、楕円曲線の関係 楕円積分とリーマン面 リーマン面と楕円曲線 楕円積分と楕円関数 楕円モジュラー関数J(τ)

ホモロジーとコホモロジー

ホモロジーもコホモロジーも図形の繋がり方を捉えるという点で似ている。それだけでなく、どちらの見方を取っても同じような量が得られる。 ホモロジー コホモロジー ※ 集合の包含関係(部分集合)の記号「⊂」に線がついた「―――⊂」は「⊂」と同じ意味。 例えば…

収束から始める位相入門

位相の初学者向けの説明を収束中心に行っていくとどうなるかを考える。森毅『位相のこころ』冒頭に収録されている解説的な文章「位相概念」は、「極限」「収束概念」から話が始まっている。この行き方について梅田亨『森毅の主題による変奏曲』は ここは、初…

楕円モジュラー関数 J(τ)とλ(τ)

魔王 ……… 私の妻を紹介しよう。あらゆる楕円関数とトーラスを闇から支配する楕円モジュラー関数J(τ)だ。 ……… 私λ(τ)と、私の妻とは、という関係にある……… (難波誠『複素関数 三幕劇』) 『複素関数 三幕劇』は、大学の教科書を除けばおそらく最初かその次くら…

電磁気の単位系についてのメモ

有理か非有理か 三元か四元か 静電単位系、電磁単位系 MKSA単位系 cgsガウス単位系

ガウスの種の理論

「群の表現論の初期の歴史について」を書くつもりが、出だしの部分が肥大化した。 問題の背景 2次形式の指標 指標が定義できることの証明 2次形式の同値類 類に対する指標 種 種の性質 2次形式の合成 種の性質の証明 2次形式がどの数を表せるかの判定 参考文…

プログラミングにおけるモナドの初期の歴史について

P. Wadler "How to Replace Failure by a List of Successes" (1985) E. Moggi "Computational Lambda-Calculus and Monads" (1988) M. Spivey "A Functional Theory of Exceptions" (1990) E. Moggi "Notions of Computation and Monads" (1991) P. Wadler …

階乗からガンマ関数

階乗の補間 階乗n!をうまく補間して自然数以外でも定義された関数 f(x)を作りたいとする。 ただし階乗では n!=(n-1)! が成り立っているので、それに合わせて自然数以外のxについても f(x)= x・f(x-1) が成り立つようにする。

メモ: 確率変数とは

確率変数とは何かについてのメモ 変数としての確率変数 「確率変数の和」をどう定義するか? 関数としての確率変数 関数としての確率変数と変数としての確率変数

ガウスの補題についてのメモ(2): 4次剰余の場合

補題の比較 平方剰余の場合 ガウスの補題: はで割り切れない数とし、はルジャンドル記号とする。 を素数で割った余りのうちより大きいものの個数を個とすると となる。 4次剰余の場合

ガウスの補題についてのメモ(1): 補題の証明

平方剰余についてのガウスの補題は次のようなもの。 はで割り切れない数とし、はルジャンドル記号とする。 を素数で割った余りのうちより大きいものの個数を個とすると これをどうやって証明するか以前に、どうして唐突に「より大きいものの個数」なんてもの…

Lispの壁の高さ

『文學界』10月号に載っている円城塔「プロローグ」第6回で少しだけLispやSchemeやGaucheについての話題になっていた。小説でGaucheへの言及があるのは他は木本雅彦『くあっどぴゅあ』だけだろうか。 Lispの処理系を入れたが、対話環境を触っても釈然とせず…

素イデアル分解が存在して一意性が成り立つための条件

素数と素イデアル 素イデアル分解の存在 素イデアル分解の一意性 デデキント環

類体論についてのメモ

ガロア拡大 類体の定義 類体論の主な定理 エルブランの補題の使われるところ 文献 補足: 合同イデアル群についての説明