球面テンソル演算子についてのメモ

J.J.サクライ『現代の量子力学』の3.11節「テンソル演算子」(1版では3.10節)に入ったところで何をしているのか分からなくなり、特に球面テンソル周りの数式が何をやっているのか意味が取れずそこで止まっていた。
だいぶ試行錯誤して考えがまとまってきたので、現在理解した(と思う)ことを残しておく。

目次:

  1. ベクトル演算子
    1. 誤解
    2. ベクトル演算子の変換の仕方
  2. 補足: 線形変換で成り立つ関係式
  3. 直交テンソル演算子
    1. 定義
    2. 基底としての性質と群の表現
    3. 既約でない表現
  4. 球面テンソル演算子
    1. 角運動量演算子の固有ベクトル
    2. 球面テンソル演算子の定義
    3. 球面テンソル演算子の無限小回転での定義
    4. 球面調和関数との関係
  5. ウィグナー・エッカルトの定理
    1. 角運動量合成での基底ベクトル
    2. クレプシュ・ゴルダン係数
    3. ウィグナー・エッカルトの定理

1. ベクトル演算子

1.1. 誤解

まずサクライp.311(1版 p.318)で、ベクトル演算子Viについて

Vの期待値は次のように変化すると仮定する:
 \langle \alpha|V_i|\alpha\rangle \rightarrow \langle \alpha|D^{\dagger}(R)V_i D(R)|\alpha\rangle = \sum_{j} R_{ij}\langle \alpha|V_i|\alpha\rangle \qquad {\rm (3.11.2)}
これは任意のケット|\alpha\rangleに対して成り立たなければならない。そこで
 D^{\dagger}(R)V_i D(R) = \sum_{j} R_{ij}V_j\qquad {\rm (3.11.3)}
演算子の等式として成立しなければならない。ここでR_{ij}は回転Rに対応する3×3行列である。

と説明している。(正規直交系を前提にしているのでこのRijは直交行列(p.313。1版p.320)。あとに出てくる直交テンソル演算子に対応して「直交ベクトル演算子」と呼ぶのがよいかもしれない。)

ここですでに誤解が入っていたため分からなくなっていた。誤解は次のふたつ。

  1. 演算子ViをRだけ回転させると、D(R) Vi D(R) に変化する。
  2. 演算子V1、V2、V3はベクトルの成分に対応する。
1.2. ベクトル演算子の変換の仕方

演算子AをRだけ回転させて得られる演算子を (A)Rと書くことにする。
状態ベクトル|α⟩をRだけ回転させた状態|α⟩R = D(R)|α⟩ に対する、(A)Rの期待値
 \langle \alpha|_{R} (A)_R |\alpha \rangle_R
を考えると、これは状態ベクトル演算子も回転させていないときの期待値 ⟨α|(A)|α⟩と等しくなる。(例えば演算子としてx軸方向の角運動量演算子Sxを考えると、演算子が測定する方向と状態ベクトルの両方がRだけ回転するので。) よって、
 \langle \alpha|A|\alpha\rangle = \langle\alpha|_R\, (A)_R\, |\alpha\rangle_R
となる。そして |α⟩R = D(R)|α⟩ かつ ⟨α|R = ⟨α|D(R)なので
 \langle \alpha|A|\alpha\rangle  =\langle\alpha|D^{\dagger}(R)\, (A)_R\,D(R)|\alpha\rangle
となる。これがつねに成り立つには、
 (A)_R = D(R)A D^{\dagger}(R)
でないといけない。
よって演算子AをRだけ回転させると、D(R)ViD(R) ではなく、D(R)ViD(R) に変化する。

ではD(R)ViD(R)が何を表すかというと、D(R)がユニタリー演算子なので、
 D^{\dagger}(R)V_i D(R) =D(R^{-1})V D(R^{-1})^{\dagger} = (V)_{R^{-1}}
となって、回転Rではなくその逆変換の式だったことが分かる。

しかしそうすると、ベクトル演算子が満たすべき式3.11.3は
  (V_i)_{R^{-1}} = \sum_{j} R_{ij}V_j
ということになり、書き換えると
  (V_i)_{R} = \sum_{h} V_h R_{hi}
となって、普通の3次元ベクトルvをR回転させたときの成分変換の式
 v'_i = \sum_{j} R_{ij}v_j
とは対応していない。

これがどういうことかというと、結論としては、ベクトル演算子Viはベクトルの成分に対応するのではなくベクトル空間の基底に対応する、ということ。
線形変換fを行ったとき、基底について
 f({\bf e}_i) = \sum_h {\bf e}_h R_{hi}
の関係があり、これがベクトル演算子が満たすべき関係式
  (V_i)_{R} = \sum_{h} V_h R_{hi}
と対応している。

2. 補足: 線形変換で成り立つ関係式

物理の本ではベクトルの基底が明示的に現れずベクトルの成分だけしか出てこないことがよくあるので、線形変換での成分と基底について簡単に書いておく。
ベクトル {\bf v} = \sum_i v_i {\bf e}_i が線形変換fで f({\bf v}) = \sum_i  v_i'{\bf e}_i に移るとする。
このとき、ベクトルの成分について
 v_i' = \sum_j R_{ij}v_j
の関係があるとき、基底については
 f({\bf e}_i) = \sum_h {\bf e}_h R_{hi}
の関係がある。

また、各ベクトルを実際に別のベクトルに変換させるのではなく、基底を取り換えた場合、関係式は上のものとは違ってくる。間違いが起こりやすいので、こちらについても一応書いておく。

古い基底  {\bf e}_1,\cdots {\bf e}_n から新しい基底  {\bf e}_1',\cdots {\bf e}_n' に取り換えたとき、ベクトル自体は変化しないので、
 {\bf v} =  \sum_i v_i {\bf e}_i = \sum_i v_i' {\bf e}_i'
の関係がある。
そして、成分について
  \stackrel{\mbox{新成分}}{v'_i} = \sum_j R_{ij}\stackrel{\mbox{旧成分}}{v_j}
の関係があるとき、基底については
  \stackrel{\mbox{旧基底}}{{\bf e}_i} = \sum_h \stackrel{\mbox{新基底}}{{\bf e}'_h} R_{hi}
の関係がある。
成分についての関係式がv_i' = \sum_j R_{ij}v_jとなるようにした場合、基底についての式は

  • 線形変換では「f(基底) = 基底・行列」
  • 基底の取り換えでは「旧基底 = 新基底・行列」

となっていて間違えやすい。
さらに、線形代数の本では基底の変換行列Rを
  \stackrel{\mbox{新基底}}{{\bf e}'_i} = \sum_h \stackrel{\mbox{旧基底}}{{\bf e}_h} R_{hi}
で定義することも多く、この場合は成分の関係式が
  \stackrel{\mbox{新成分}}{v'_i} = \sum_j R^{-1}{}_{ij}\stackrel{\mbox{旧成分}}{v_j}
となって、多くの物理の本に出てくる成分変換式と逆になってしまう。

3. 直交テンソル演算子

3.1. 定義

ベクトル演算子の変換が基底の変換に対応していたように、直交テンソル演算子の変換はテンソル空間の基底の変換に対応する。

ベクトル空間Wの正規直交基底(あるいはそれを定数倍した基底)が回転Rに対して
 ({\bf e}_i)_R = \sum_h {\bf e}_h R_{hi}\quad (Rhi は直交行列)
のように変換するとき、2階テンソル空間W⊗Wの基底は、
 ({\bf e}_i \otimes {\bf e}_j)_R = \sum_{g,h}{\bf e}_g \otimes {\bf e}_h R_{gi}R_{hj}
と変換する。

そこでこれに対応して、演算子の組Vij (1≦i≦3)が、回転に対して
 (V_{ij})_R \, \left( = D(R)V_{ij} D^{\dagger}(R)\right)\, = \sum_{g,h}V_{gh} R_{gi}R_{hj}
と変換する時、この演算子の組Vij (1≦i≦3) を2階の直交テンソル演算子という。
3階以上の直交テンソル演算子も同様に定義される。

3.2. 基底としての性質と群の表現

まず直交ベクトル演算子(1階直交テンソル演算子)V1、V2、V3が生成するベクトル空間W を考える。すると、次のことが成り立っている。
 演算子Aが、A∈W ならば、回転変換後も (A)R∈Wとなる。
これは、A = c1V1+c2V2+c3V3 と書けることと、ベクトル演算子の回転についての関係式 (V_i)_{R} = \sum_{h} V_h R_{hi} から分かる。(演算子をいいかげんにいくつか取ってそれらが生成するベクトル空間を考えた場合は、その空間内の演算子を回転させた時、必ずしもその空間内にあるとは限らない。)

これは群の表現の言葉で言うと次のようになる。

まず群の表現の説明から。
群Gから、適当なベクトル空間V上の正則な線形変換への写像 ρ: G→ GL(V) が
 ρ(g1・g2) = ρ(g1)・ρ(g2)
を満たすとき、写像ρを群Gの表現(線形表現)という。

この文章では、群Gとして3次回転群SO(3)を考える。

  • R∈SO(3)に対して、3次元空間の幾何ベクトル(矢印のベクトル)をRだけ回転させる変換を対応させる写像は、群SO(3)の表現になる。
  • 状態ベクトルの回転を考えて、回転R∈SO(3)に対して|\alpha\rangle \stackrel{D(R)}{\longmapsto} D(R)|\alpha\rangleという線形変換D(R)を対応させる写像 D: R↦D(R) を考えると、SO(3)の表現になる。
  • 回転R∈SO(3)に、演算子に対する線形変換 A \stackrel{\rho(R)}{\longmapsto} D(R)AD^{\dagger}(R)を対応させる写像ρもSO(3)の表現になっている。

そして、さきほどのベクトル空間W(直交ベクトル演算子の生成する空間)は、Wに含まれる演算子を回転させたら必ずWに入っていたけれど、これは表現ρをW上に制限して考えてもSO(3)の表現になっている、ということになる。(ベクトル空間Wの次元が3なので、これは3次元表現。またこのようなWを不変部分空間という。Wの個々のベクトルは変化するけど空間W自体は回転しても変わらない(不変)。)

2階直交テンソル演算子の場合も同様のことが言える。
演算子Vij (1≦i≦3)が生成するベクトル空間をW'とすると、直交ベクトル演算子の時と同じように、W'に入っている演算子は回転したあとも常にW'に入っている。つまりW'は不変部分空間になる。よって写像ρを空間W'だけで考えたものはSO(3)の表現(9次元表現)になる。

3.3. 既約でない表現

3次元の回転群SO(3)の表現は、相対論に出てくる4元ベクトルについても考えることができる。
この場合ベクトル空間が4次元なので4次元表現が得られるのだけど、このとき4元ベクトルの時間成分は一切変化せず、空間成分だけが(3次元ベクトルの回転と同じように)変換される。そのため、この4次元表現は、空間部分だけの表現(3次元表現)と時間部分だけの表現(1次元表現)に分解することができる。

また同じく相対論で、電磁テンソル(2階交代テンソル)の回転を考えると、SO(3)の6次元表現が得られる。(2階交代テンソル空間が6次元なので。)
一般のローレンツ変換では電場成分と磁場成分が混ざりあって変換されるけど、3次元の回転だけを考えている場合は電場部分と磁場部分がそれぞれ独立に変換するので、6次元表現が3次元表現+3次元表現に分解される。

このように、より小さい表現に分解できる表現を(直)可約表現といい、一方もうそれ以上分解できない表現を既約表現という。

先に出てきた例では、普通の3次元幾何ベクトルによる表現や、直交ベクトル演算子(1階テンソル演算子)による表現は既約表現。
一方、2階直交テンソル演算子による9次元表現は可約表現で、表現を分解することができる。
2階直交テンソル演算子の生成するベクトル空間W'の基底を取り換えて、
V11+V22+V33、 V12-V21、 V23-V32、 V31-V13、 V12+V21、 V13+V31、 V23-V32、 V11-V22、 V22-V33
を基底に取る。
このとき、V11+V22+V33が生成する部分空間W1を考えると、W1に含まれる演算子は回転させてもW1に含まれる。つまりW1は不変部分空間で、空間をW1に制限すると1次元表現が得られる。
同じくV12-V21、V23-V32、V31-V13が生成する部分空間W2も不変部分空間になっている。(W2に制限したものは3次元表現。)
そして残った5つの基底で生成される部分空間W3も不変部分空間になる。(表現は5次元表現。)

このように2階直交テンソル演算子が生成する9次元ベクトル空間W'上の9次元表現が、1次元表現、3次元表現、5次元表現に分解する。(サクライp.313下~p.314上(1版p.320下〜p.321上)辺りの文章はこのことを述べている。)
3階以上の直交テンソル演算子についても同様に表現が分解する。つまりこの表現は既約表現ではない。
このように、2階以上の直交テンソル演算子が生成する空間Wで群の表現 A \stackrel{\rho(R)}{\longmapsto} D(R)AD^{\dagger}(R)を考えても既約表現になっていない。

これを踏まえて、表現が分解しない空間(既約表現になる空間)を生成する基底として球面テンソル演算子が登場する。

4. 球面テンソル演算子

4.1. 角運動量演算子固有ベクトル

サクライ3.5節に出てきたJ2、Jzの同時固有ベクトル |jm⟩は、回転に対して

 D(R)|jm\rangle = \sum_{m'}|jm'\rangle D^{(j)}_{m'm}(R)

のように変換する。(サクライ 式3.5.49。)
この式は、jを固定して2j+1個のベクトル |jm⟩ (-j≦m≦j) が生成するベクトル空間W(j)を考えたときに、W(j)が不変部分空間になることを示している。
よってR∈SO(3)に対して  W^{(j)}\ni |\alpha\rangle \stackrel{\rho^{(j)}(R)}{\longmapsto} D(R)|\alpha \rangle \in W^{(j)} を対応させる写像ρ(j)はSO(3)の2j+1次表現になる。
このρ(j)は既約表現になっていて、しかもSO(3)の既約表現はこのρ(j) (j=0、1、2、…)ですべて尽きている。
このように角運動量演算子J2、Jzの同時固有ベクトル |jm⟩ は、回転に対して良い性質を持つ基底になっている。

そして、これと同じ形の変換をする演算子を考えたものが、球面テンソル演算子になる。

4.2. 球面テンソル演算子の定義

J2、Jzの同時固有ベクトル |jm⟩の変換の式にならって、球面テンソル演算子は次のように定義される。

2j+1個の演算子の組T(j)m (-j≦m≦j)が、 回転R∈SO(3)に対して

  D(R) T^{(j)}_m D^{\dagger}(R) = \sum_{m'=-j}^{j} T^{(j)}_{m'} \, D^{(j)}_{m'm}(R)

となるとき、これらの演算子の組T(j)m (-j≦m≦j)をj階の球面テンソル演算子という。
(この式は添字の文字を変えるとサクライの式3.11.22bと同じ。またこのとき、T(j)m (-j≦m≦j)が生成するベクトル空間をWとすると、R∈SO(3)に線形変換  W\ni A \stackrel{\rho(R)}{\longmapsto} D(R)AD^{\dagger}(R) \in W を対応させる写像ρは、SO(3)の2j+1次既約表現となる。)

特に回転不変な演算子は、0階の球面テンソル演算子になる。
またV1、V2、V3が直交ベクトル演算子のとき、

 V'_{+1} = -\frac{1}{\sqrt{2}}(V_1+iV_2), V'_0 = V_3, V'_{-1} = \frac{1}{\sqrt{2}}(V_1-iV_2)

のように基底を取り替えると、V'+1、V'0、V'-1は1階の球面テンソル演算子になる。
また、2階直交テンソル演算子(9個の演算子からなる)の場合、基底の取り換えによって、0階球面演算子(1個)、1階球面テンソル演算子(3個から成る)、2階球面テンソル演算子(5個から成る)が得られる。
さらにより高階の直交テンソル演算子の場合も、基底を取り換えて球面テンソル演算子に置き換えることができる。

4.3. 球面テンソル演算子の無限小回転での定義

当然のことではあるけど、球面テンソル演算子の定義に出てくる行列D(j)m'm(R)は、異なるRごとに違う行列になる。なので、球面テンソル演算子の定義は無数の式から成っている。
ここで、無限小回転(あるいは回転の微分)を考えると、定義として3つの式を考えるだけで良くなる。(これはリー群の表現からリー代数微分表現を得ることに対応する。) 式の数が3つなのは、SO(3)の要素(3次元空間での回転)を局所的に3つのパラメータで指定できること(きちんと言えばSO(3)が3次のリー群であること)に由来する。

サクライにあるような無限小回転を考える代わりに(それと実質同じだけど)微分で考える。
何らかの連続パラメータs(例えばある軸周りの角度とか)によって回転Rを s↦R(s) のように指定する。ただしs=0のときR(0)は恒等変換(=全く回転しない)になっているとする。このR(s)について、球面テンソル演算子の関係式は、

  D(R(s)) T^{(j)}_m D(R^{-1}(s)) = \sum_{m'=-j}^{j} T^{(j)}_{m'} \, \langle j,m'|D(R(s))|j,m\rangle

となる。ここでs=0のところで、両辺をsで微分すると、

  \frac{dD(R(s))}{ds}T^{(j)}_m - T^{(j)}_m\frac{dD(R(s))}{ds} = \sum_{m'=-j}^{j} T^{(j)}_{m'} \, \langle jm'|\frac{dD(R(s))}{ds} |jm\rangle

となる。左辺は交換関係になっているので書き換えて、

  \left\lbrack \frac{dD(R(s))}{ds}, T^{(j)}_m \right\rbrack = \sum_{m'=-j}^{j} T^{(j)}_{m'} \, \langle jm'|\frac{dD(R(s))}{ds} |jm\rangle

が得られる。
特にR(s)がn軸まわりの角度sの回転のとき、\frac{dD(R(s))}{ds} = \frac{\hbar}{i}{\bf J}\cdot \hat{\bf n} となるので、\frac{\hbar}{i}をはらうとサクライの式3.11.24

  \left\lbrack{\bf J}\cdot \hat{\bf n}, T^{(j)}_m \right\rbrack = \sum_{m'=-j}^{j} T^{(j)}_{m'} \, \langle jm'|{\bf J}\cdot \hat{\bf n} |jm\rangle

が得られる。(ここで{\bf J}\cdot \hat{\bf n}\bf n軸方向についての角運動量演算子。)
ここで例えばx軸周り、y軸周り、z軸周りを考えれば3つの関係式が得られるし、さらにそれらを組み合わせればサクライにあるように、Jzを用いた式(3.11.25a)と上昇下降演算子を使った式(3.11.26b)が得られる。

4.4. 球面調和関数との関係

ここまで、ベクトル演算子テンソル演算子は成分ではなく基底に対応する、として話を進めてきたのだけど、球面調和関数との関係を説明している部分(サクライp.314~p.315、1版p.321~p.323)と不整合に見えるかもしれない。
その部分は次のようなことが説明されている。

  1. 球面調和関数は、\theta,\phiの関数と見ることも、方向固有ベクトル|\hat{\bf n}\rangleの関数と見ることもできる。 Y_{l}{}^{m}(\theta,\phi)= \langle \hat{\bf n} | l, m \rangle = Y_{l}{}^{m}(\hat{\bf n})
  2. 方向ベクトル\bf nは、 {\bf n} = \sin\theta \cos \phi\, {\bf e}_x + \sin\theta \sin \phi \,{\bf e}_y + \cos\theta \,{\bf e}_z = \frac{x}{r}{\bf e}_x +  \frac{y}{r}{\bf e}_y +  \frac{z}{r}{\bf e}_z と書ける。(この式はサクライ本文には出てこない。)
  3. このため球面調和関数は、\frac{x}{r},\frac{y}{r},\frac{z}{r}(方向ベクトル\bf nの成分)の関数として表すことができる。(例えば、Y_1{}^0 = \sqrt{\frac{3}{4\pi}}\frac{z}{r}, \quad Y_1{}^{\pm1} = \mp\sqrt{\frac{3}{4\pi}}\frac{1}{\sqrt{2}}\left(\frac{x}{r}\pm i \frac{y}{r}\right) など。)
  4. そして、球面調和関数Y_{l}{}^mの式に出てくる\frac{x}{r},\frac{y}{r},\frac{z}{r}を直交ベクトル演算子Vx、Vy、Vzに置き換えてやると、l階の球面テンソル演算子が得られる。

ここで明らかに、ベクトルの成分\frac{x}{r},\frac{y}{r},\frac{z}{r}演算子Vx、Vy、Vzに置き換えている。これは「ベクトル演算子は成分ではなく基底に対応する」と合っていないようにも見える。

これは次のような事情による。
まず、球面調和関数と球面テンソル演算子の関係で重要なのは、

  \langle \hat{\bf n}|D(R)|l,m\rangle

という式。
この式でD(R)を右側に作用させると、

 \langle \hat{\bf n}|D(R)|l,m\rangle = \sum_{m'}\langle \hat{\bf n}|l,m'\rangle D^{(l)}_{m'm}(R)

が得られ、この右辺は球面テンソル演算子の変換式と同じ形になっている。
一方、D(R)を左側に作用させてみる。演算子のブラベクトルへの作用は共役を取って考える必要があるので、

 \langle \hat{\bf n}|D(R)= \langle \hat{\bf n}|D^{\dagger}(R^{-1}) = \langle \hat{\bf n}|_{R^{-1}}

となり、方向固有ベクトルは回転Rではなく、その逆変換をしている。
逆変換R-1に対して、方向ベクトルnの成分\frac{x_i}{r}は、

 \frac{x_i}{r} \mapsto \sum_{j}R^{-1}_{ij}\frac{x_j}{r} = \sum_{j}\frac{x_j}{r}R_{ji}

と変換される。(ここで変換行列Rijが直交行列なのを使った。また、この変換式は直交ベクトル演算子をR回転させたときの式  (V_i)_{R} = \sum_{h} V_j R_{hi} と同じ形をしている。)
よって、D(R)を左側に作用させた場合、

 \langle \hat{\bf n}|D(R)|j,m\rangle = \langle \hat{\bf n}|_{R^{-1}}\,|l,m\rangle =Y_{l}{}^{m}(\sum_{j}\frac{x_j}{r}R_{ji})

となる。ここで球面調和関数を \langle \hat{\bf n}|l,m\rangle =Y_{l}{}^{m}(\frac{x_j}{r}) のように、\frac{x_i}{r}の関数と考えた。
D(R)を左側に作用させた場合と右側に作用させた場合と比べると、

 Y_{l}{}^{m}(\sum_{j}\frac{x_j}{r}R_{ji}) = \sum_{m'}Y_{l}{}^{m'}(\frac{x_j}{r}) D^{(l)}_{m'm}(R)

が得られる。この式で、\frac{x_i}{r}を直交ベクトル演算子Viに置き換えれば、(\frac{x_i}{r}の変換の式が、ベクトル演算子と同じ形だったので)

 \left(Y_{l}{}^{m}(V_i)\right)_{R}  = \sum_{m'}Y_{l}{}^{m'}(V_i) D^{(l)}_{m'm}(R)

が得られ、Ylm(Vi) (-l≦m≦l)がl階の球面テンソル演算子になることが分かる。

サクライでは、方向ベクトルの回転を逆回転で考えず(式3.11.18)、代わりに演算子に対する変換をD(R)ViD(R)ではなくD(R)ViD(R) として説明している(式3.11.21)。このため、結果として球面テンソル演算子の正しい定義式3.11.22bに到達し、それと同時に、成分と演算子を対応させた説明でつじつまが合って見えるようになっている。

5. ウィグナー・エッカルトの定理

5.1. 角運動量合成での基底ベクトル

ウィグナー・エッカルトの定理を述べるにはクレプシュ・ゴルダン係数が必要になり、クレプシュ・ゴルダン係数は角運動量の合成を考える時の基底に関係する。(サクライ3.8節「角運動量の合成」に出てくる。)

異なる部分空間がそれぞれ角運動量を持っているときに、それらを合わせた全体系の固有ベクトルを考える。
このとき固有ベクトルの取り方について、ふたつの取り方が考えられる。

  1. 選択A: 「系1の角運動量の大きさ」「系2の角運動量の大きさ」「系1の角運動量z成分」「系2の角運動量z成分」の同時固有ベクトルを取る。
    • サクライでは |j1j2 ; m1m2⟩ の順番で表記される。
    • 系1と系2それぞれの固有ベクトル |j1m1⟩と|j2m2⟩ をそのまま合わせた(テンソル積をとった)ものと等しいので、|j1m1⟩|j2m2⟩ とか |j1m1⟩⊗|j2m2⟩ とか |j1m1⊗ j2m2⟩ のようにも書かれる。
  2. 選択B: 「系1の角運動量の大きさ」「系2の角運動量の大きさ」「全体の角運動量の大きさ」「全体のJz」の同時固有ベクトルを取る。
    • サクライでは |j1j2 ; jm⟩ と表記される。
    • j1、j2を省略して |jm⟩ と書かれたり、あるいは |(j1j2); jm⟩ のように書かれたりもする。

サクライの表記の仕方だとABどちらの固有ベクトルを表しているの分かりにくくなりやすいので、選択B(全体の角運動量の大きさを考える方)の固有ベクトルは j1j2部分をカッコでくくって |(j1j2); jm⟩ と書くことにする。

5.2. クレプシュ・ゴルダン係数

j1、j2を固定したとき、|j1j2 ; m1m2⟩ (選択Aのベクトル)が生成するベクトル空間と、|j1j2 ; jm⟩ (選択Bのベクトル)が生成するベクトル空間は一致する。またこのベクトル空間は回転に対して不変部分空間になる。(この部分空間でSO(3)の表現を考えると、(2j1+1)(2j2+1)次元表現が得られる。)
ただしそれぞれの固有ベクトルは、回転に対する変換の仕方が異なっている。

  •  D(R) |j_1j_2;m_1m_2\rangle = \sum_{m'_1m'_2} |j_1j_2;m'_1m'_2\rangle D^{(j_1)}_{m'_1 m_1}(R) \,D^{(j_2)}_{m'_2 m_2}(R)
  •  D(R) |(j_1j_2);jm\rangle = \sum_{m'} |(j_1j_2);jm'\rangle D^{(j)}_{m' m}(R)\quad (こちらだと、部分空間がさらに分解されて、各j(全角運動量の大きさ)ごとに不変部分空間になる。)

これら二組の基底の間の関係式

  |(j_1j_2);j m\rangle =\sum_{m_1,m_2} |j_1j_2;m_1m_2\rangle \langle  j_1j_2;m_1m_2|(j_1j_2);jm\rangle

における変換行列(あるいはその成分) \langle  j_1j_2;m_1m_2|(j_1j_2);jm\rangle はクレプシュ・ゴルダン係数と呼ばれる。

5.3. ウィグナー・エッカルトの定理

ウィグナー・エッカルトの定理では、k階の球面テンソル演算子T(k)qがあったときに、その行列要素
 \langle \alpha',j'm'| T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle
がどういう性質を持つかを問題にする。(ここでαは、 j、m以外の回転に依存しない量子数を表す。)
そのために球面テンソル演算子の変換性を使って T(k)q|α,jm⟩の性質を調べる。

5.3.1. T(k)q|α,jm⟩の性質
まず T(k)q|α,jm⟩ は、回転Rに対して次のように変換する。

 \begin{eqnarray} D(R) T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle &=& D(R) T^{(k)}_q D^{\dagger}(R)\,D(R)|\alpha, jm\rangle  \\ &=& \sum_{q' } T^{(k)}_{q'} D^{(k)}_{q'q}(R) \sum_{m'}  | \alpha , jm' \rangle D^{(j)}_{m'm}(R) \\ &=& \sum_{q',m' } T^{(k)}_{q'} | \alpha , jm' \rangle D^{(k)}_{q'q}(R) \,D^{(j)}_{m'm}(R) \\ & = & \sum_{q',m' } T^{(k)}_{q'} | \alpha , jm' \rangle \langle kq'| D(R) |kq \rangle \langle jm'| D(R) |jm \rangle  \end{eqnarray}

これは、角運動量の合成系の固有ベクトル |kj;qm⟩の変換の仕方と同じになっている。

  \begin{eqnarray} D(R) |kj;qm\rangle &=& D(R)|kq\rangle \otimes D(R)|jm\rangle = \Bigl(\sum_{q'}|kq'\rangle  D^{(k)}_{q'q}(R) \Bigr)\otimes \Bigl(\sum_{m'}|jm'\rangle  D^{(j)}_{m'm}(R) \Bigr) \\ &=& \sum_{q',m'}|kq'\rangle\otimes |jm'\rangle D^{(k)}_{q'q}(R) \, D^{(j)}_{m'm}(R) \\ &=& \sum_{q',m' }|kj;q'm'\rangle D^{(k)}_{q'q}(R) \, D^{(j)}_{m'm}(R) \\ & = & \sum_{q',m' } |kj;q'm'\rangle \langle kq'| D(R) |kq \rangle \langle jm'| D(R) |jm \rangle  \end{eqnarray}

(ただし、T(k)q|α,jm⟩ の方の式の |kq⟩と |jm⟩は同じ空間の状態ベクトルだけど、|kj;qm⟩ の方の式での |kq⟩と |jm⟩は異なる空間(合成されるそれぞれの系)の状態ベクトルという違いがある。)

ここでさらに回転を連続パラメータsで指定し(s=0のとき恒等変換(=回転なし)とする)、s=0で微分すると、

  \frac{d(D(R(s))}{ds} T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle  = \sum_{q',m' } T^{(k)}_{q'} | \alpha , jm' \rangle \left(\langle kq'| \frac{d(D(R(s))}{ds}  |kq \rangle \delta_{m'm} + \delta_{q'q} \langle jm'| \frac{d(D(R(s))}{ds}  |jm \rangle  \right)

となり、これはさらに

  \frac{d(D(R(s))}{ds} T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle  = \sum_{q'} T^{(k)}_{q'} | \alpha , jm \rangle \langle kq'| \frac{d(D(R(s))}{ds}  |kq \rangle + \sum_{m'} T^{(k)}_{q} | \alpha , jm' \rangle \langle jm'| \frac{d(D(R(s))}{ds}  |jm \rangle

となる。
この式から、n方向の角運動量演算子Jnに対して、

  J_{\bf n} T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle  = \sum_{q'} T^{(k)}_{q'} | \alpha , jm \rangle \langle kq'| J_{\bf n} |kq \rangle + \sum_{m'} T^{(k)}_{q} | \alpha , jm' \rangle \langle jm'| J_{\bf n} |jm \rangle

の関係が得られる。
|kj;qm⟩ についても同様にして、

  J_{\bf n} |kj;qm\rangle  = \sum_{q'} |kj;q'm \rangle \langle kq'| J_{1{\bf n}} |kq \rangle + \sum_{m'} |kj;qm' \rangle \langle jm'| J_{2{\bf n}} |jm \rangle

の関係が得られる。

最後のふたつの式から、どの方向n角運動量演算子も、T(k)q|α,jm⟩と|kj;qm⟩に対して同じように作用することが分かる。ただし |kj;qm⟩に作用しているのは全角運動量演算子Jn = J1n⊗1 + 1⊗J2n (サクライの3.8.23式)という違いがある。
角運動量の大きさを与える演算子J2も、J2 = JxJx + JyJy + JzJzと定義されているので、T(k)q|α,jm⟩と|kj;qm⟩のどちらに対しても同じように作用する。

特に方向nとしてz軸を取ると、基底ベクトルがJz固有ベクトルであることから

  J_{z} T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle = q\hbar T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle + m\hbar T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle = (q+m)\hbar T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle

となって、T(k)q|α,jm⟩ は、Jzに対する固有ベクトル固有値 (q+m)ℏを持つ。(同じく |kj;qm⟩もJzに対する固有ベクトル固有値は(q+m)ℏ 。)
このことから、m'=m+q のとき以外では、
 \langle \alpha',j'm'| T^{(k)}_q | \alpha, jm\rangle = 0
となることが分かる。(m選択則。)

5.3.2. 新たな状態ベクトルを定義する
次にクレプシュ・ゴルダン係数の関係式
  |(kj);JM\rangle =\sum_{q,m} |kj;qm\rangle \langle kj;qm|(kj);JM\rangle
を参考にして(またサクライの定理3.1(1版p.325の定理)に出てくる式(で添字の文字を取り替えたもの)
  T^{(J)}_{M} =\sum_{q,m} X^{(k)}_{q}Z^{(j)}_{m} \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle
を参考にして)、

  |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle =\sum_{q,m}  T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle

という状態ベクトルを新たに定義する。(定義したベクトルの中に書かれている記号は、どのパラメータや量に依存しているかを示している。テンソル演算子については全てのT(k)qに依存しているのでqをはぶいた。)
この |T(k),α,j,J,M⟩ は回転に対して、|(jk);JM⟩ と同じように、

  |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle = \sum_{M'} |T^{(k)},\alpha,j,J,M' \rangle D^{(J)}_{M'M}(R)

のように変換する。
そして |(jk);JM⟩と同様に、J2とJzの同時固有ベクトルとなる。ただし規格化されているとは限らないので、|α,JM⟩ の定数倍となる。
さらに |α,JM⟩も回転に対して

  |\alpha,JM\rangle = \sum_{M'} |\alpha,JM' \rangle D^{(J)}_{M'M}(R)

と変換するので、 |T(k),α,j,J,M⟩の変換式が成り立つために、 Mに依存しない定数 c(T(k),α,j,J)があって、

  |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle = c(T^{(k)},\alpha,j,J)\,|\alpha,JM\rangle

と書けないといけない。
この結果を使って、行列要素 ⟨α',j'm'|T(k)q|α,jm⟩ を計算する。

5.3.3. 行列要素の計算
|T(k),α,j,J,M⟩ と |T(k)q|α,jm>の関係

  |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle =\sum_{q,m}  T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle

を逆に解く。クレプシュ・ゴルダン係数は直交行列になり逆行列は ⟨(kj);JM | kj;qm⟩ = ⟨kj;qm | (kj);JM⟩ となるので、

  \begin{eqnarray}T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle &=& \sum_{J,M} |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle \langle  (kj);JM|kj;qm\rangle \\ &=& \sum_{J,M} |T^{(k)},\alpha,j,J,M\rangle \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle \\ & = & \sum_{J,M} c(T^{(k)},\alpha,j,J) |\alpha, JM\rangle \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle \end{eqnarray}

となる。よって行列要素は、

  \begin{eqnarray}\langle \alpha',j'm'| T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle &=& \sum_{J,M} c(T^{(k)},\alpha,j,J) \langle \alpha',j'm' |\alpha, JM\rangle \langle  kj;qm|(kj);JM\rangle \\ &=& c(T^{(k)},\alpha,j,j') \langle \alpha',j'm' |\alpha, j'm'\rangle \langle  kj;qm|(kj);j'm'\rangle  \end{eqnarray}

となる。ここで |α',j'm'⟩ と |α,JM⟩ は j'=J、m'=M以外のとき直交していることを使った。
また、|α、jm⟩はどれも規格化されているので、⟨α',j'm' |α,j'm'⟩ の値は、α'とαだけで決まりj',m'には依存しないので、クレプシュ・ゴルダン係数以外の部分をまとめて

  \begin{eqnarray} \langle \alpha',j'm'| T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle &=& c(T^{(k)},\alpha,j,j') c'(\alpha', \alpha) \, \langle kj;qm|(kj);j'm'\rangle \\ &=& C(\alpha',j', T^{(k)},\alpha,j)\, \langle  kj;qm|(kj);j'm'\rangle  \end{eqnarray}

と書くことができる。
これでウィグナー・エッカルトの定理が証明された。

最後に示された式が、サクライでの式
  \langle \alpha',j'm'| T^{(k)}_{q} | \alpha , jm \rangle = \langle  jk;mq|(jk);j'm'\rangle   \frac{\langle \alpha'j'||T^{(k)}||\alpha j \rangle}{\sqrt{2j+1}}
と微妙に違うけど、クレプシュ・ゴルダン係数について ⟨kj;qm | (kj);j'm'⟩ = (-1)j+k-j'⟨jk;mq | (jk);j'm'⟩ の関係があるので、定数部分を
  C(\alpha',j', T^{(k)},\alpha,j) = (-1)^{j+k-j'}\frac{\langle \alpha'j'||T^{(k)}||\alpha j \rangle}{\sqrt{2j+1}}
と置き換えると同じ式が得られる。
(上の証明では T(k)q|α,jm⟩と |kj;qm⟩を対応させて式の計算を進めていったけど、|jk;mq⟩と対応させて計算することもできて、それだとクレプシュ・ゴルダン係数の部分は添字が入れ替わって ⟨jk;mq | (kj);j'm'⟩ の形で現れる。)