1. オイラー・マクローリンの和公式
ベルヌーイ数が出てくる公式にオイラー・マクローリンの和公式がある。
オイラー・マクローリンの和公式は、積分の台形近似 を、逆に和を積分で近似していると考えて、さらに和を取って、
と近似して、誤差の評価式にベルヌーイ数とベルヌーイ多項式を使ったものだと考えることができる。
ただ、上の式のようにaからbまでの和を考えた場合のオイラー・マクローリンの和公式は、r=2以上のベルヌーイ数しか出てこないので、 B+ と B- の違いは影響しない。(和公式の導出過程でも、B+r を使っているとも B-r を使っているとも、どちらと考えることもできる)。
和を取る時に端の項を除いて や
を考えた場合、
となるけど、 なので、
と書くことができ、ベルヌーイ数B1 も使った形の公式が得られる。
2. 和公式の導出
オイラー・マクローリンの和公式を導くために、 の台形近似
に注目する。ここで、1次のベルヌーイ多項式 を使うと、右辺は
と書き直すことができる。このことに注目すると は部分積分により
と変形できる。これは「台形近似 + 誤差項」と考えることができる。
次に誤差項にあたる をさらに部分積分で変形することを考える。この時、g'(x) = B1(x) かつ、g(0) = g(1) となる関数 g(x) を使って、
と部分積分する。なぜかというと、 などについても同様の変形をしたときに
が現れ、和を取ったときに端以外の項が打ち消し合って都合が良いので。
さて この g(x) というは 2次のベルヌーイ多項式を2で割った にほかならない。(ベルヌーイ多項式は k≠1 のとき Bk(0) = Bk(1) となる。また、Bk'(x) = k Bk-1(x) となるのはべき乗和多項式の微分の関係式から分かる)。したがって、
と変形される。さらに同様の部分積分をする。 で B3(0) = B3(1) なので、
が得られる。以下、同様の部分積分を繰り返していくと、
となる。より一般的にした に対しては、Bl(x) の代わりに Bl(x - k) = Bl(x - ⌊x⌋) を使って同様の変形をして、
を得る。この式を見ると l=1 の項も l≧2 の項も同じ形でまとまっているけど、ここからの変形で1次の項だけ別扱いされる。
l≧2 の項は、和を取ったに打ち消し合うこと念頭に作られている。実際、l≧2 の時の
となっていて、これらは和を取ったときに端の値以外は打ち消し合う。
一方、l=1の項は や
で、これらは合わさって和
(+端でのズレ) になる。
3. 和公式の導出(続き)
和公式を導くために先程の式
をさらに変形する。まず l≧2 の部分。 Bl(0) = Bl(1) = Bl や、ベルヌーイ数は l≠1の時 Bl = (-1)l Bl を満たすという性質を使うと、
となる。
l=1の項は、
と変形できる。「そのまま展開」の形だと1次のベルヌーイ数 B+1 も B-1 も出てこない。「打ち消し合う形」にすると l≧2 の時と同じ形の項が出てくるので式をまとめられる。(ここまでの式変形は積分範囲をkからk+1で考えた場合もほぼ同様にできる)。
あとは積分範囲を整数aからbまでつなげて左右の項を適宜入れ替えれば、和の範囲がそれぞれ違う3種類のオイラー・マクローリンの和公式
が得られる。
B+1 のベルヌーイ数を使う和公式では始端の項 f(a) が和に含まれず、B-1 のベルヌーイ数を使う和公式では終端の項 f(b) が和に含まれない。
特に f(x) = xr として、a=0、b=n で和公式を適用するとべき乗和多項式が得られる。0〜n の始端を含めない和は なのでベルヌーイ数 B+1 を使う和公式により S+r(n) が得られ、終端を含めない和は
なのでベルヌーイ数 B-1 を使う和公式から S-r(n) が得られる。
4. 演算子を用いた導出
オイラー・マクローリンの和公式を上でおこなったような仕方で導いた場合、1次の項だけ式変形の流れが異なることもあり、ベルヌーイ数 B+1 にしてもベルヌーイ数 B-1 にしても、いくらか人工的に公式に付け加えたようにも見える。
しかし演算子を使って形式的にオイラー・マクローリンの和公式を導くとまた違って見える。(クヌース他『コンピュータの数学』9.5節、ヴェイユ『数論: 歴史からのアプローチ』3章XVII節など)
まず差分演算子(前進差分演算子) Δ を考える。差分演算子 Δ は、関数 f(x) に適用したときに
(Δf)(x) = f(x+1) - f(x)
という新たな関数が得られるという演算子。
次に差分演算子の逆演算子にあたる和分演算子 Σ を考える。
これは関数 f(x) に適用すると (ΔF)(x) = f(x) となる「差分の原始関数」F(x) を与える演算子だけど、 周期1の関数 C(x) は差分を取ると (ΔC)(x) = C(x+1) - C(x) = 0 なので、差分の原始関数 F(x) に対して F(x) + C(x) も差分の原始関数となり、 差分の原始関数はひとつには決まらない。(これは微分の原始関数(普通の原始関数)が積分定数Cを使って F(x) + C と表されることと類似している)。xが整数のときを考えると、
と表すことができる。(cは整数の定数、Cは定数)。前進差分 (Δf)(x) = f(x+1) - f(x) の逆演算Σを考えた時、和の末項はxではなく x-1 になる。
さらに差分演算子Δと微分演算子Dを結びつける。
f(x+1) はテーラー展開により
と書けるけど、演算子の部分 は指数関数のテーラー展開と同じ形をしているので eD と書くことにする。eDは f(x) を f(x+1) に変換するシフト演算子を表す。すると
となる(ここで I は (If) = f となる恒等演算子)。つまり演算子Δは「Δ = eD - I」と書ける。
和分演算子 Σ は差分演算子 Δ の逆演算子だったので と分数の形で書いてみると、「Δ = eD - I」となることと合わせて
と書き換える。するとベルヌーイ数 B- の母関数
と同じ形が現れたので、
として変形を続けると
となる。1/Δ が差分演算子 Δ の逆演算子 Σ だったように、 1/D は微分演算子 D の逆演算子 ∫ とみなした。
よって、和分演算子 Σ を f に適用して x を整数の時を考えると
となってオイラー・マクローリンの和公式とだいたい同じ式(ただし剰余項がなく発散のことも何も考えていない式)が得られる。
さらに (Σf)(b) - (Σf)(a) を考えると
となり、よりオイラー・マクローリンの和公式に近い式が得られる。
また ∫ = D-1 だったので f(x) の原始関数を f(-1) と書くことにすると、 と書け、
のようにさらにまとめた形で書ける。
ここまで差分演算子 Δ を
前進差分 (Δf)(x) = f(x+1) - f(x)
を表すものとして使ってきたけど、
後退差分 (Δf)(x) = f(x) - f(x-1)
だと考えると、(f(x-1)のテーラー展開から、f(x)をf(x-1)に変換する演算子が e-Dと書けることが分かるので) 後退差分演算子を Δ = I - e-D と書ける。
その逆演算子 Σ は x が整数の時 となる演算子(和を取る末項が x-1 ではなく x になる)になり、
となる。
あるいは
「後退差分 (f(x)-f(x-1))」=「前進差分 (f(x+1)-f(x))」×「e-D ((x)を(x-1)にシフト)」
なので
「後退差分の逆演算子」=「前進差分の逆演算子」×「eD ((x)を(x+1)にシフト)」
として、
となる。いずれにしても、ベルヌーイ数 B+ の母関数
と同じ形の部分式が現れるので、前と同様の式変形を行っていき最後に (Σf)(b) - (Σf)(a) を考えると、前と同様の式(使っているベルヌーイ数と和の範囲だけ異なる式)
が得られる。
4. ゼータ関数の特殊値 ζ(1-m) とベルヌーイ数
正整数 m を取ると、ゼータ関数の 1-m の時の値は
となることが知られている。このことをオイラー・マクローリンの和公式を使って導いてみる。
まずゼータ関数は
と定義される。この無限級数は の時しか収束しないけど、オイラー・マクローリンの和公式を使って導かれる式はこれより広い領域で収束する。
この無限級数から有限範囲を取り出してオイラー・マクローリンの和公式を適用する。ここでは、ベルヌーイ数 B+ を使う方の公式
を使う。(後ろの項と形を合わせるために右辺初項に をつけた。また剰余項の部分は RM と省略した)。この式で f(k) = k-s として、その微分は下降階乗を使って
と書くことにして、 和公式の範囲を a=0、b=N としたものを使うと次のようになる。
ここで、 とした上で、
とすると、剰余項 RM(N,s)も収束し
となる。
無限級数 は
で収束するけど、導いた右辺の式は剰余項 RM(s) が
で収束し、より広い範囲のゼータ関数の値を定めている。この式を使って ζ(1-m) の値を求めると l>m の項が(
なので)消えて、
となる。さらにベルヌーイ数の漸化式より なので、
となり、ζ(1-m) の値が求められた。
ベルヌーイ数 B- を使うオイラー・マクローリンの和公式を使った場合、 に和公式を適用したあと
とすると
が得られる。B+ が B- に変わり、 の項が無くなった。
ζ(1-m) についても前と同様の流れで
が得られる。B- の漸化式は場合分けがあったので、この式についても場合分けして考える。
m≧2 のとき、 となるので、
となる。
m=1 のときは となることと
より
となり、m≧2 の時の式と符号が違っている。しかし「 m≧2 の時、 B-m = (-1)mB-m 」というベルヌーイ数の性質を使えば、
のように m=1 の場合も含めた式が得られる。
