面白かった世界史の新書5冊

時代や地域が偏りすぎているけれど。

(追記: 中国史の新書5冊

他に宮崎市定『雍正帝―中国の独裁君主』(岩波新書中公文庫)、吉川忠夫『侯景の乱始末記―南朝貴族社会の命運』(中公新書)、岡本隆司『近代中国史』(ちくま新書)など)

川北稔『砂糖の世界史』

砂糖についての歴史の本ではなく、砂糖を通して世界史の流れを語る本。典型的な歴史の本と比べると語りのスタイルがかなり違う。たとえば歴史の本というとたいてい人の名前がたくさん出てくるけど、この本ではほとんど出てこない。とにかく読みやすくかつ面白い。
新書ではないけど、加藤祐三 川北稔『アジアと欧米世界』も良い。こちらはもっと普通の記述スタイルの歴史本。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

世界の歴史〈25〉アジアと欧米世界 (中公文庫)

世界の歴史〈25〉アジアと欧米世界 (中公文庫)

菊池良生神聖ローマ帝国

何人かの神聖ローマ皇帝をピックアップし、彼らの列伝的な記述を軸にして神聖ローマ帝国の通史を語る。特定の人物の記述から離れた『砂糖の世界史』とは逆に、人に注目しながら歴史の流れを記述していく。人物列伝としても面白い読み物。

神聖ローマ帝国 (講談社現代新書)

神聖ローマ帝国 (講談社現代新書)

もっと通史的なものとしては坂井栄八郎『ドイツ史10講』(と柴田三千雄フランス史10講』)あたり。
ドイツ史10講 (岩波新書)

ドイツ史10講 (岩波新書)

フランス史10講 (岩波新書)

フランス史10講 (岩波新書)

藤沢道郎『物語イタリアの歴史』

西ローマの皇女ガラ・プラキディアから作曲家ヴェルディまで10人の人物の物語を通してイタリアの歴史を語る。人物列伝を通して通史を語るという点で『神聖ローマ帝国』と近い。
副題に「解体から統一まで」とあるように、統一国家としてのイタリアがない時代のイタリア通史を語るという構成も良い。

『物語イタリアの歴史II』も面白いけど、こちらはもともと語学講座のテキストに発表された文章を著者の亡くなった後に本にまとめたものなので、全体の繋がりや統一性のようなものがIより希薄なのが不満(ローマの聖天使城が繰り返し登場するけれど全ての話に出てくるわけではない)。

  • 第1話 皇帝ハドリアヌスの物語
  • 第2話 大教皇グレゴリウスの物語
  • 第3話 マローツィア夫人とその息子たちの物語
  • 第4話 異端者アルナルドの物語
  • 第5話 教皇ボニファティウス八世の物語
  • 第6話 ロレンツィオ・デ・メディチの物語
  • 第7話 航海者コロンボの物語
  • 第8話 画家カラヴァッジョの物語

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

物語イタリアの歴史―解体から統一まで (中公新書)

岡田暁生西洋音楽史

読みやすさだけならこの本の内容を簡潔にした感じの『CD&DVD51で語る西洋音楽史』の方が読みやすいけれど、

列挙したものは出来ればすべて聴いて、ある文脈を感じてほしいのだ。もし百ものCDやDVDを挙げたとしたら、この本はカタログになってしまっただろう。それらをすべて集める根気を読者に要求することは出来ない。だが五十前後なら、ある程度の時間さえかければ、そう大きな負担なしに聴き通すことが出来るのではないか。そう考えて落ち着いた結果が、五十一という数である。

って、51枚もCDやDVDを視聴するのは相当たいへんだと思う。

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

CD&DVD51で語る西洋音楽史 (ハンドブック・シリーズ)

CD&DVD51で語る西洋音楽史 (ハンドブック・シリーズ)

朝永振一郎『物理学とは何だろうか』

物理学の歴史的発展をたどりながら物理学を解説した本。熱力学に関する部分が特に良い。同じ著者の『量子力学』も歴史的な流れをたどっていくという構成の良書。
あとTruesdell『Essays in the History of Mechanics』や山本義隆古典力学の形成』あたりをもっと易しくして新書のフォーマットにうまく落としこんだ本とかあれば読んでみたい。

物理学とは何だろうか〈上〉 (岩波新書)

物理学とは何だろうか〈上〉 (岩波新書)

物理学とは何だろうか〈下〉 (岩波新書 黄版 86)

物理学とは何だろうか〈下〉 (岩波新書 黄版 86)

量子力学 I (物理学大系―基礎物理篇)

量子力学 I (物理学大系―基礎物理篇)

Essays in the History of Mechanics

Essays in the History of Mechanics

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ

古典力学の形成―ニュートンからラグランジュへ