ブラームスの交響曲第4番の第3楽章がスケルツォなのは何故か

ベートーヴェン以降、典型的な交響曲というのは4つの楽章からなり、急→緩→スケルツォ→結のように構成されている。もちろんあくまで典型的というだけで、この形から外れる交響曲もたくさんある。
一般に保守的だとされているらしいブラームスも、交響曲第1番から第3番では、第3楽章にスケルツォを置いていない。
ところがブラームス交響曲第4番では、第3楽章にスケルツォが置かれている。
別にスケルツォにしてもしなくても勝手ではあるけど、どうして4番だけそうしたのかとも思う。典型的な形式に回帰しようとしたという感じでもないみたいだし。
これは次のような理由なのではないかと思う。


交響曲第4番の(第3楽章ではなく)第4楽章はパッサカリアになっているけど、ブラームス交響曲第3番を作曲する以前にすでに交響曲の楽章にパッサカリアを用いるというアイデアを述べていたという。
とはいえ、どのような形でパッサカリアを用いるのか。
ブラームスは『ハイドンの主題による変奏曲』のフィナーレでもパッサカリアを用いている。パッサカリア自体が一種の変奏曲なので、『ハイドンの主題による変奏曲』は変奏曲の中に変奏曲が出てくるという入れ子の形になっている。
パッサカリアを使うにあたって『ハイドンの主題による変奏曲』のことがブラームスの念頭にあり、今度はパッサカリアを使って交響曲の中で交響曲入れ子を作ろうと考えたのではないか。交響曲の中に交響曲入れ子にするという基本設計ができれば、パッサカリアを用いる楽章は交響曲の構成に沿ってメリハリをつけた形に作ろうという方針も立つ。
しかし交響曲のミニチュアが入れ子になっていることをできるだけ判るようにするには、典型的な交響曲の構成になるべく近づけないといけない。交響曲の楽章構成は規則として決まっているわけではないけれど、典型的な構成から離れてしまっては入れ子であることがわからなくなってしまう。
したがって、パッサカリア楽章をおおまかに4つのパートに分割して急→緩→スケルツォ→結という形に構成すればよいだろう。そして実際、交響曲第4番第4楽章はそのような形になっている。
内側の形が決まったので、これに合わせた形で外側である交響曲全体の構成も決まる。そうでないと入れ子の形にならない。その結果、交響曲第3番までとは異なり、第3楽章はスケルツォにしなければならなくなる。

1.急 → 2.緩 → 3.スケルツォ → 4.(急→緩→スケルツォ→結)

このような理由で第4番の第3楽章はスケルツォになったのではないかと思う。クラシック音楽を聞き出したのが最近であまり知識もない状態で考えた結果だから、重要な基本的知識が欠落しているかもしれないけど。


第4番第4楽章が交響曲を圧縮した形になっているというのは次の動画で知った。
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